2015年 12月 31日
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by k2675
| 2015-12-31 23:59
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2015年 12月 05日
第22話
・「初夏の三年坂」 安曇は京都を宇喜多さんと歩きたいと思った。京都は好きな街で、年に1度は何らかな用事で足を運んでいる。 宇喜多さんの都合の良い時間帯もあるが、京都で少しおしゃれなレストランで食事もできればと思い描く。 場所は色々とあるが、男女のデートコース的にはこれまで体験してはいないで、安曇の心には新鮮さが湧いている。 天気の様子もあるが、楽しく過ごせる一日を思い描きながら、宇喜多さんに提案してみた。 宇喜多さんは勤務的には夜勤もないが、子どもさんがいらっしゃるので、そうそう電話での話はできなと安曇は配慮し、大半のやり取りはメールで行っていた。 「次にお会いできるとしたら、いつ頃が空いていますか? よかったら京都でも散策したいのですが」 安曇のメールに、間をおいて返信があった。 「安曇さん、今日と行ってみたいです。空いているのは6月の第1土曜日だったら行けます」 安曇も予定はなかったのですぐその日に決めた。梅雨時だったので雨の心配もあったが、雨だったら雨でまた何らかな情緒もあるかもしれないと、柔軟に考えている。 ・「電車の中で」 4回目のデートだと安曇も、もう恋人気分。実はそこがトラップなのかもしれないのだが。 阪急梅田の京都線の前で待ち合わせをする。時間は10時少し前。 10分置きに特急電車が発車するので、混雑していても一電車待てば座れるので、のんびりとした気分で待ち合わせをしていた。 約束の時間が来ても宇喜多さんの姿が見えないので、安曇に不安がよぎる。 電話してみよう。 安曇は携帯に電話をする。電話口に宇喜多さんが出る。 「はい宇喜多です」 「おはようございます、安曇ですが、今どこですか?」 「いまコンビニの前で、改札にはまだ入っていないんです、どこに行ったいいんですか」 「コンビニですか、何階にいますか」 「え~と、3階だと思います」 「そしたらコンビニの前を東に行ってください」 「東ですか」 「あ!みっけ!」 「え?どこですか?」 「改札の中だよ」 「あ、判りました」 二人は携帯を切って、宇喜多さんは改札の中へ入ってくる。安曇はその姿を追いながら待っている。 安曇はなんとなく恋人気分だ。 駅のコンコースで待ち合わせた宇喜多さんと安曇は、京都行の特急のホームに並ぶ。 いつも観光客で混雑するホームに、電車を1本送らせて乗ることにし電車を待った。 梅田の駅はヨーロッパスタイルの終点始発型のホームになっていて、一般的な日本の駅にはない雰囲気を醸し出している。たいていの乗降客は何げない風景に見えているかもしれないが、安曇はなんとなく味わいを感じていて、好きな駅の一つだ。 安曇は彼女と電車に乗り込み、2シーターの席へ。 愉しい一日になることを願って安曇はシートに座る。 安曇は唐突ながら宇喜多さんに、「いつもは母親であるんだろうけども、今日は彼女になってほしい」と告げた。 その言葉に宇喜多さんからは特段リアクションはなかったけれども、電車の中での宇喜多さんの話は、過去の離婚に至った話をしてくれた。 その話題は安曇が投げたわけではなかったが、真剣に付き合うのであれば、彼女にとって過去の話は告げておくべきだと思ったのかもしれない。 電車の中で彼女の過去の話を聞いていると、それぞれ人生にはいろいろな不幸な出来事が起こっているのだと実感する。 彼女は前夫と別れてから、働きながら一人の子どもを育てている。安曇は自身も父子家庭だが、経済的なことを考えるとしっかりとしているなと関心もするし、逞しくにも見える。 しかし女性側の離婚の様子を知ると、大概男の身勝手さが見えてくる。それはそれでどこまでそう思っていいのかということもあるが、逆に「男」のイメージがそのネガティブなイメージで定着しているのなら、安曇はそれを払しょくしたいと考える。 ただ、宇喜多さんも世の男が皆同じとは捉えてはいないだろうから、その必要性もなかろうが。 京都四条河原町に降り立ち、八坂神社を抜けて円山公園へ向かった。 円山公園にあるレストランで、先に食事をすることに。 安曇は予約をしてはいなかったが、たまたま席に余裕があったのか、テーブルに着くことができた。 安曇はこれまで幾度か訪れたことがあったので、なじみがあった。エスコートするものとしては気持ちに多少でも余裕があった方がいい。 時間帯がお昼だったこともあって、ランチのコースを愉しんだ。 飲み物はアルコールを抜いたワインを注文し、ちょっと優雅な気分にしたりながらコース料理を楽しむ。宇喜多さんもこの程度のランチは慣れている様子だったので、気軽に昼食を愉しむ。 会話は仕事のことや、家庭のこと、子どものことなどを話す。 途中で宇喜多さんの姿を、写真にとってもよいか許可をもらって、カメラを向ける。何枚かシャッターを切るごとにその画像を見せて、宇喜多さんが選択する。 料理が運ばれてきて、その食材のことをウエイターに質問すると答えられなかったことから、そのウエイターに随分気を使ってもらった。 特に宇喜多さんへの態度がすごく丁寧だった。 料理の話題も楽しく、この時間帯は和気藹々あと食事を楽しんだ。 安曇はプライベートで外出するとき、コンパクトデジタルカメラを持っていく。この日もカメラを持って行っていた。これまでの「婚活」の過程で写真など撮らせてもらえるまでには至っていない。 安曇はこのデートで初めて彼女の顔写真を撮ってみようと思った。 「宇喜多さん、写真撮ってもいいかな」 「だめですよ」 「そうですか」 「一枚だけ、雰囲気」 安曇は理由にならない理屈をつけて、ねだってみた。 「じゃ、一枚だけ、確認させて」 安曇はテーブル越しに、彼女の写真を何枚かとって、宇喜多さんに見せた。 彼女は、はにかみながら 「写真写り悪いでしょ」 「そんなことはないよ、綺麗に撮れているよ」 安曇は写真を撮らせてもらったことで、随分と先へ進んだと勝手に思い込んだ。 食事を済ませた後、清水寺の方へ足を向けた。 また八坂神社を抜け、高台寺の前を過ごして、三年坂方向へ二人でゆっくりと歩いて行く。 三年坂は観光客もおおく、身動きが取れないほどだ。 その中を、道沿いの店を見ながら、ゆっくりと坂を上っていき、清水寺の境内にたどり着く。 境内に入り、上の方に祭られている神社にもお参りしながらぐるっと回って、舞台をもみて回って境内の庭を回って降りてくる。 天気にも恵まれていたので、舞台からの眺めも良く、会話はなかったが、お互い満足した雰囲気で清水寺を愉しんで、また来た道を下って行く。 二年坂あたりで少しお茶でも、と、京都の和を基調としたインテリアの喫茶店に入り休憩する。宇喜多さんはまた何かと家庭の状況と前の夫の様子を話題にのせている。 安曇は宇喜多さんに困りごとがあるのなら、いろいろとどうしようかということに、安曇なりの考えを伝えていた。 安曇は話を聞きながら、結婚まで色々と片付けなければならないハードルも考えていた。 清水寺から結局四条河原町まで歩き、川の桟敷で休んでその光景を二人して眺め、時間も夕方に迫ってきたことで、四条河原町から電車に乗って帰路に就いた。 梅田でお疲れ様と、いつものように別れ、安曇は携帯のメールで「お疲れ様でした、今日は楽しかったよ」と伝えた。 ・「夢は終わる」 京都を散策した日、安曇は宇喜多さんにメールを打ったが、なぜか帰ってこない。 数日まって、高垣さんに相談してみた。 「心配ですね、こちらからちょっと様子をうかがってみます」 「よろしくお願いします」 それから1種間ほどたって高垣さんから連絡が入った。 「安曇さん、私ショックです」 「え」 安曇はまさかと思ったが、だめだったんだと認識した。 「安曇さん、それまで宇喜多さんの話とか伺っていて、うまくいっていたと思ったんです。私ショックです。何がそうなったのかわかりません。安曇さん何かありました」 安曇はインストラクターがびっくりするくらい、突然のアウトにダメ出しの理由を見つけることができない。 「高垣さん、理由はなんなんです」 「いや理由がはっきりしないのよ」 「そうですか」 安曇の意気消沈が伝わったのか高垣さんは残念だとしか言いようがなかったようだ。 安曇は、理由が何か判らなかったが、ひょっとしたら、婚活のことをお子さんにでも話して、そこでダメ出しを食らった可能性もあると、いいように理解して、高垣さんに、宇喜多さんにはくれぐれもよろしく伝えておいてと、伝言した。 今回初めて、何度かデートを重ねて、来れからだと言うところでとん挫した。 安曇は少し婚活を休む気分になっていた。 #
by k2675
| 2015-12-05 15:41
| 恋の物語
2015年 11月 22日
第21話
・「新たな展開」 安曇は宇喜多さんの気持ちは読めていなかったが、3回も会ってくれるだけでも嬉しかった。 行先が決まり、食事するお店を探す、出来ればゆっくりと過ごすことが出来てロケーションも良ければと、探したお店に予約を入れる。 大した準備ではないが、その日のことを考えるとそれだけでも夢は膨らむ。 数日前から天気予報では雨が予想されていた。宇喜多さんから天気を心配して、予定変更の提案が寄せられる。が食事する場所を予約していたので、一旦そこまで出向いてもらい、食事をしながらでもどこへ行くか二人で考えられればと想定していた。 宇喜多さんにはそのようにメールを返し、その日を迎える。 予定の時間よりも10分ほど前には約束の場所へ付いておきたいと、ネットで電車のダイヤを確認しておき、10分前には約束の場所には到着した。 すでに宇喜多さんは待ち合わせの場所へ来ていた。「待たしていたのかな」とお詫びしたら、宇喜多さんも今来たところだと答えてくれる。 前回のデートの時に、安曇がリースをプレゼントしたお礼を買いに、早めに来ていたのだ。 2人して早速食事へ向かう。 通されたテーブルが大きめなテーブルで、向かい合わせになると相手が遠くへなるので、隣へ並んで座らせてもらうことにした。 向かい合わせではないが、横に居る相手に向きながら、カウンターに向いて食事するように、食事のひと時を楽しんだ。 その日は和食を予約していて、おしゃれな食前酒や八寸から通され、リッチな食事となる。事前に女性には嫌いなものを確認していて、和食を選定していた。その食事は喜んでもらった。 3回目になるとだんだんと距離が近くなってきているように感じていた。それは安曇の錯覚なのだろうかと。 食事を終え、二人してハーブ園に向かう。 ハーブ園にはロープウェイを利用することになる。ロープウエイは二人っきりだ。その日は荒れ模様の天気予報だったのだが、天気も良くなり日が差していた。 安曇は女性に、「誰かが天気をよくしてくれたんだよ、僕らを見守ってくれているんだよ」というと、はにかんでいた。 ロープウェイの中では屋外の風景や、木々や花々を話題にしていた。 ロープウェイを降りて広場に向かって歩き出す。広場から天気の良い下で、遠くの山々や足元の街並みの美しさを語り、写真を撮る。 広場の入り口にある花壇の花々の花の名前を探しながら、花の美しさを楽しむ。 そして奥の施設へ向かう2人。 広場から建物へ向かって歩きはじめると宇喜多さんは、安曇の腕に手を添えた。安曇は手をつないで歩こうと声をかけると、宇喜多さんは頷く。 2人は寄り添って園内を散策する。 安曇はそのときに「女性」というお見合いの対象から、「彼女」という相手に変わった。 その二人の姿は不自然か?いやそうではないだろう。誰が見てもカップルではないだろうか、安曇はそう思う。 そして誰の目も気も気にしなくていい。その日安曇と宇喜多さんは最寄りの駅まで手をつないだままだった。 宇喜多さんは、安曇の手を温かいといった。安曇は「掌が厚いからな」と返す、そうすると彼女は「手が温かいと、心が冷たい?」というので、安曇は笑ってしまった。 手を握っているというのがこんなに幸せなことか。安曇はしみじみ思う。 「香りの館」の中で、いろいろな香りを嗅いで見ながら、顔が近づき話をする。彼女には抵抗感がないようだ。円満なカップルのように見える。 山桜や建物を背景に、宇喜多さんに写真を撮ってあげようかというと、年が判るからいやだと、安曇は無理強いをしなかった。 そこでまた写真館でのことが話題になった。あの写真館で婚活プロフィール用に二人とも写真を撮ってもらったのだ。それも楽しい思い出のようになっていた。 宇喜多さんが時折手を温めていたので、どうしたのと尋ねると、彼女は「私寒がりなんです」というので、安曇は「僕が湯たんぽになってあげるよ」と返したら、笑っていた。 □美しい花々の中で 花々を見ながらハーブ園の庭園を下る。 彼女は一つ一つのハーブを丁寧に見ていく。二人はそれぞれの花々のことを話す。 安曇はこのような光景が、恋愛の一つのシュチエーションだったら、それは求めていたものなのだと思う。 安曇の婚活は、ただ結婚が目的ではない。愛する人に「恋」をしながら時間を過ごしたいと思っている。 相手の女性には特段のことを求めてはいない。お互いが持っているそれぞれの世界を理解し合いながら、ときとして同じ時間を過ごせばいい、そして支え合いながら。 安曇は彼女を見ていると、包んであげたいと思える人と感じている。 彼女は何を思っているのだろう、何を思って腕を組んできたのだろ。そのようなことを聞くわけにもいかない。彼女は前夫と別れ子ども育てている、彼女を支える人は多くいるだろうが、しかし夫は存在しない。心の支えとなる人はいないと安曇は推測する。 宇喜多さんが肩を寄せてきたのは、外気温が寒かっただけだろうか、そうではないだろう。彼氏もしくは夫に包まれたいのではないのだろうか、安曇はそう捉えていた。 安曇の友人は言うかもしれない、「ただ寒かっただけだよ、お前勘違いするなよ」 もしうまくいかなかったら「だから言ったろ、勘違いするなって」 そのような声が聞こえてきたとしても、安曇は勘違いじゃないと信じたい。 美しい花々を見ながら道を下り、花々の写真を撮ってまたそれを見る。 程よいところで温室があって、そこで二人してハーブティーを飲む。 話題はお付き合いの具体的な話題はしない。 雑談とお互いの子どもとの距離などを話す。 2人はまたロープウェイに乗ってハーブ園を後にした。 □気持ちを伝える 安曇はロープウェイの中で、彼宇喜多さんに婚活サービスシステムの中にある紹介休止について言及し、彼女に安曇は今後の他の女性の紹介を断ると告げた。そして婚活サービス会社の担当者からなにがしかの連絡があるかもしれませんねと。 ロープウェイを降りて、外へ出ようとすると小雨が降っていた。 小雨の降り止むまで建物の中で少し話した。 宇喜多さんは私でいいのですかと尋ねる。 安曇はそのつもりだと答える。そしていますぐのことではないだろうから、ゆっくりとお付き合いしようと話すと、彼女は「一人だったらすぐにでも」と口にし、安曇のことを「暖かい人ですね」と言った。 そしてまた手をつないで街中へ向かって歩いていく二人。 途中結婚式場へ道がつながっていて、「今ここへ入るのは早いよな」と安曇が口にすると、彼女はくすくすと笑う。 安曇は彼女の帰りの時間を気遣って、夕方に宇喜多さんを解放することにする。彼女とは電車に乗るまで手をつないでいた。電車は同乗し、途中まで送っていく、そして別れた。別れ際に彼女は手を小さく振っていた。 次は合う場所を約束し、日程は決まっていないもの、ゴールデンウィーク中に会うことになった。その日から1週間から10日の内だ。 彼女は楽しみにしてくれているのだろうか、彼女は次ではどこまでの繋がりを期待しているであろうか、そこがまだ読めない。彼女のこの出会いと、「恋」の温度差を、安曇は考えている。 □微笑み これまで10名ほどの女性と会ってきたが、素直にか、もしくは自然に気持ちが傾くことはなかった。 今回の彼女には、笑みの中に優しさを感じ取っていた。 そして包んであげたいという気持ちが湧いていた。 それは安曇の一方的な思いで、彼女の気持ちはくみ取れない。 安曇が彼女の気持ちが、近づいてきていると感じたのは、そっと腕を組んできたときだ。 #
by k2675
| 2015-11-22 15:12
| 恋の物語
2015年 11月 15日
第20話
・「最後の一人」 そう、いくら婚活して多くの女性と会ったとしても、最後の女性と成立するのだ。 いや成立するから最後になるのだ。 その最後の女性と。 そう安曇はこの女性が最後なんだと思うようになり、4回目のデートで京都を散策。 愉しい一日を過ごして、次のデートに胸を膨らませながら別れた。 これまでの3回のデートではその日のうちにメールで何らかなアクションがあったが、4回目のデートの後何のリアクションもない。 安曇からメールを送るものの、それも帰ってこない。 安曇に不安がよぎり高垣さんに事の次第を伝える。 高垣さんから宇喜多さんに確認してもらう。 数日たって高垣さんから連絡があった。 「安曇さん、だめだったみたいですね」 「え?」安曇は聞き直した。決しておかしな状況ではなかったと思っていたからだ。 「だめなんですか、理由は?」 「理由はよくわからないんですが、安曇さん、宇喜多さんへ何か「おりいった」話をされましたか?」 「いいえ、そんな記憶はありません」 「安曇さんとは、無理だというようなことです」 ぎゃ!安曇はなぜなんだと自問する。 11人目にしてようやく相手が見つかったと「思い込んでいた」安曇にとってショックだった。 安曇だけでなく高垣さんもまた宇喜多さんの担当の方も同様だったらしく、そのことが高垣さんから伝わってきた。 安曇はますます「恋」が遠のくのを感じていた。さてそのあっけない終わりまでのことを少し。 ・「3回目のデートから」 ロープェイから降り立ち、広場から建物へ向かって歩きはじめると宇喜多めぐみさんは安曇の腕に手を添えた。安曇は手をつないで歩こうと声をかけると、彼女は頷く。 2人は寄り添って園内を散策する。 誰が見ても自然の姿だろうと安曇は思った。 ・「勘違い」 男性は女性を誘って、了解を得られれば即恋人にでもなってもらったと一方的に理解しがちだ。が女性は相手がどのような男性でもよほど嫌悪感がなければ、手を繋ぐことも拒否しないし、また男性が誤解していると思えばやんわりと諭す行動に出るが、男性はそこを読み取れないようにある。よって勘違いが生じ、こんなつもりじゃなかったと思うことになる。 安曇もその男たちと同様だろう。 ・「初対面にもどって」 宇喜多めぐみさんとお見合いが成立し、日程調整も進んで、お見合いの当日が来た。 安曇は以前指定されたことのあるホテルのロビーに向かった。 ところが時間が来ても婚活サービスの窓口が現れない。婚活会社へ連絡し、担当窓口から連絡が入る。 「安曇さん落ち合う場所が移動になったんです、どこそこへ来て下さい」 なんじゃそれは、と安曇は思いつつその場所へ向かった。 所定の場所には、すでにお見合いの相手が待っていた。 簡単な紹介を受けて、二人で喫茶店を探す。 ホテル内の喫茶店は混んでいたので、近くのデパートの喫茶店へ向かい、そこで1時間ほどおしゃべりをした。 そのおしゃべりの中で相手の宇喜多さんは男を見定めているだろう、と安曇は思う。安曇は自身の婚活の状況も説明し、これまで10数名と会ったことを伝え、そしてお付き合いにならなかったことで、今があることも伝えている。 宇喜多さんも自身の家族のことや、仕事の事を話題にし、お互いが結婚できる環境にあるのかを話題にしている。 安曇は宇喜多さんの笑顔に魅せられ、会話の中で優しさを感じ取っていた。 その日はあっさりと別れたが、安曇はもう一度会いたいと思ってその場を後にした。 安曇は帰宅して早めに、もう一度会いたい旨をパソコン上のシステムに打ち込んだ。 女性の意向は打刻期限が過ぎても結論が表示されていなかったので、男は今回も駄目だったかと、これで終りだなと思っていた。 その午後遅く、婚活サービス会社から、宇喜多さんも、もう一度会いたいとの返事だったということで、連絡先を伝えられ交際が開始される。 宇喜多さんにはお子さんがいて中学生になったばかりで、自宅を長く開けることはできないだろうと配慮して、2回目も喫茶店でお話しすることにした。 ・「桜の花のほころび」 天気の良いその日は繁華街で待ち合わせ、喫茶店を2人して探すが、よさそうなところがない。宇喜多さんも人が多いところには、あまり出向かないらしい。 繁華街の混雑する中、宇喜多さんがスターバックスを見つけ、そこでお話をすることとする。 安曇は、手作りのユーカリのリースを持参してプレゼントした。女性は花粉症で困っているという話を初対面の時に伺っていたので、ユーカリの葉のエキスに効用もあると聞き及び、出かける前に作ってきたものだ。 宇喜多さんにはユーカリのリースは喜んでもらった、安曇は点数が稼げたかなとも思う。 スターバックスでひとしきりでお話しした後、とある画廊に案内し、安曇の一面を垣間見てもらおうと案内した。 お茶をした場所から二駅ほど先で地下鉄を降り、安曇は画廊との付き合いなど説明しながら案内する。 画廊の前には神社があって、ちょうど桜の花が満開だった。桜の花を見ながら安曇は婚活を始めようと思った1年前を思い出していた。 神社の桜の枝を潜りながら、神社を抜け、画廊の扉を開ける。 画廊ではとある作家の展示会が開催されていて、来場者も結構いた。 なぜかその日、画廊の社長とその奥さんも待ち構えるようにお出迎えされて、そっと入るつもりが、一気に盛り上がってしまった。 安曇は宇喜多さんに対してちょっと申し訳ない思いをしながら、宇喜多さんを紹介する。 画廊で作品を見ながら、安曇の絵に対する趣味の話を展開、宇喜多さんは耳を傾けていた。また画廊の社長と奥さんとも話をされていた。 画廊から帰りしな、安曇は宇喜多さんを地下鉄の駅まで送りその日は終わった。宇喜多さんは安曇に「絵のことはよく理解できていないんです」と申し訳なさそうに言っていた。安曇は気にしないように、「絵は見て気に入ったか、いらないかの次元で見ていて、難しいことは考えていないよ。また難しいことは判らないしね」と言葉を添えた。 来しなに、画廊のまえの神社の境内の桜を眺めながら、桜の話などにも話題にしたことで、少しずつ和んでいるかなと安曇は思っていた。 あとで安曇は画廊へ案内したことが、安曇自身のことを少しでも理解してもらえるかなと思っていたが、宇喜多さんからすれば、知らない世界へ案内されたことで気持ちが引いてしまうかもしれないということを安曇は気づかず、配慮がなかったことに思いが及んでいなかった。 画廊では、宇喜多さんの人柄に好評で、「よさそうな人ね」と言われる。 さてその配慮に欠けた結果が、メールで届いた。 夜遅く宇喜多さんから、安曇の趣味のことで「私は、芸術とは無縁だったので、たぶん私が同じ趣味を持つことは難しいかもしれません」というような趣旨のメールが届いた。 安曇はこれって断りのメールかと考えてしまったが、安曇は、安曇の趣味と同じ趣味を持ってもらおうなどとは思ってもいないし、強制できるものでもないから、メールで「まったく同じ考え、好みなど相手に求めることは不可能だと思います。相手の方の思いも、お互いに判り合えることが、大事かなと」と返信した。 安曇はこれで終了かと思ったが、3回目のおつきあいを取り付けることになった。 安曇は、次はゆっくりと食事でもして、どこか散策でもしたいなと思った。出来れば美しい場所で気持ちが開けるような場所をと。 ただ遠出してもらうには気の毒だったので、宇喜多さんの地元、もしくはその中間と提案したが、宇喜多さんからは遠くなるが、神戸のハーブ園を提案した。 数日たって返事をいただき、食事をしてハーブ園でデートすることになった。 #
by k2675
| 2015-11-15 12:12
| 恋の物語
2015年 10月 25日
第19話
・「写真とリアクション」 プロフィール写真を入れ替えてもらったものの、その後のリアクションがない。 高垣さんのアドバイスに従って、プロに写真を撮ってもらったが、即座には結果に繋がらない。そんな話を安曇は友人にすると。 「あの写真はおかしいよ」 「何で?」 「安曇らしくないね」 「変に若く見えるし、髪型だってちょっとおかしいよ。なんであんなふうにしたんだ」 「カメラマンのつくりだな。カメラマンが婚活写真にはこれがいいって思ったんじゃないのか」 「カメラマンが思っても、実際に相手の女性がそのプロフィール写真を見て、選んでくれたらいいけど、そのがないんだろ」 「そうなんだよな」 「無理だと思うよ、僕が撮ってあげようか」 そんな会話が聞こえる。 安曇は金の無駄だったのかと思うが、写真館で自分の写真を撮ってもらったことは悪く思っていない。 しかしあの写真に期待できないことを思ってしまう。 ・「遠方から」 安曇がパソコンを見ていると、申し入れが入っていた。 その申し入れも、なぜか期限が迫っている。安曇は「おかしいな、そんなに以前から申し入れがあったら気づくはずだと。高垣さんに確認してみることにした。 安曇は勤務時間が過ぎて高垣さんへ電話を入れた。 「お世話になっています、高垣さん」 「何かありましたか安曇さん」 「相手さんからの申し入れにひとつ入っているんですが、以前からありましたか?」 「最近ですね」 「期限が迫っているんですが」 「そうですね、これは相手が申し入れたのが沢山有って、順次相手先へ送られるので、安曇さんのところには時間がたって届いたのでしょう。ただ申し入れをクリックした時点から期限が設定されるので、機械的に処理の段階で時間が迫ったんだと思いますよ」 「申し入れしてみようかなと思いますが、どう思います」 「安曇さんがあってみたいと思のだったら、ぜひお会いしたらいかがです」 「相手が東京なんですが、向こうへ行くんですかね」 「それは判りませんね、申し入れを受けてからです。こちらから手続きをしておきましょうか」 「よろしくお願いします」 安曇は東京から申し入れがあったことに関して、相手の女性のことをすごくアクティブだなと感じた。 それだけでもどんな女性か興味がそそられた。 数日して手続きが進み、大阪でお見合いの日程が決まった。 彼女は仕事を終えて東京から、大阪へ会いに来ることに安曇は驚いた。 東京から来るお相手は松島良子さん。 梅田の駅ビルにあるホテルのロビーで紹介してもらい、そのまま食事に誘った。 「東京からわざわざお越しいただき、お疲れ様でした」 「いいえ」 安曇はお店までの道すがら自己紹介を行い、また松島さんの経緯もお伺いした。 松島さんは歯科衛生士で仕事が忙しいらしい。安曇が感じたのは今の生活を変えたいのかなと。 松島さんはいまだ結婚経験はなく、これまで一人で来たらしい。 安曇は結婚はしていなくても、それなりの恋愛などはあっただろうと推測していた。 安曇への対応にしても、これまで男を全く知らないという感じではなかった。 安曇は独特の想像力で、松島良子さんとのこれからのお付き合いを想像してみるが、一時はよいとして、遠距離交際は経済面で続かないのだろうと思う。 お店で食事をするが、なじみの店ということもあって、大将との話も加わって、協議の場とはならなかった。 安曇は彼女を見送って、良い返事は期待しなかったが、松島さんからはもう一度会いたいとの返事が返ってきた。 仮の交際が始まることになり、今度は安曇が東京へ出向くことに。 ・「田舎者?」 松島さんが絵画鑑賞の趣味もある様だったので、美術間に行くことにし、東京都内の美術館の前で待ち合わせすることにした。 その日の出向いていくと、なんとその美術館は休館日。 あらまあということで、松島さんには謝罪して、行き先を変更して横浜の美術館に行くことになった。 安曇は地下鉄構内で、駅員にどの電車へ乗るのが効率がいいか確かめると。 松島さんが「尋ねなくていいです」 「え?」 安曇はなんでだろうと思ったが、松島さんの顔を見ると(かっこ悪い)と顔に書いている。 安曇は尋ねることがかっこ悪いのかなとおもいつつ、そうか松島さんは、「田舎者」が嫌なんだと。 横浜に向かって、美術館で鑑賞を済ませ、夕方食事をした。 松島さんは安曇に生活感を感じなかったらしい、要は経済力の課題だったようで、松島さんを養える男には見えなかったようだ。 「田舎者」で経済的に頼りなければ、婚活をしている女性としては、期待が持てないであろうことは想像がつく。 結果は「ご縁がなかったです」 安曇はある程度想定にだったが、高垣さんから相手にナニガ具合悪かったのか聞いてもらった。そうするとやはり「安曇が頼りなかった」ようだ。 #
by k2675
| 2015-10-25 11:40
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