2015年 11月 22日
『恋の蜃気楼』第21話 |
第21話

・「新たな展開」
安曇は宇喜多さんの気持ちは読めていなかったが、3回も会ってくれるだけでも嬉しかった。
行先が決まり、食事するお店を探す、出来ればゆっくりと過ごすことが出来てロケーションも良ければと、探したお店に予約を入れる。
大した準備ではないが、その日のことを考えるとそれだけでも夢は膨らむ。
数日前から天気予報では雨が予想されていた。宇喜多さんから天気を心配して、予定変更の提案が寄せられる。が食事する場所を予約していたので、一旦そこまで出向いてもらい、食事をしながらでもどこへ行くか二人で考えられればと想定していた。
宇喜多さんにはそのようにメールを返し、その日を迎える。
予定の時間よりも10分ほど前には約束の場所へ付いておきたいと、ネットで電車のダイヤを確認しておき、10分前には約束の場所には到着した。
すでに宇喜多さんは待ち合わせの場所へ来ていた。「待たしていたのかな」とお詫びしたら、宇喜多さんも今来たところだと答えてくれる。
前回のデートの時に、安曇がリースをプレゼントしたお礼を買いに、早めに来ていたのだ。
2人して早速食事へ向かう。
通されたテーブルが大きめなテーブルで、向かい合わせになると相手が遠くへなるので、隣へ並んで座らせてもらうことにした。
向かい合わせではないが、横に居る相手に向きながら、カウンターに向いて食事するように、食事のひと時を楽しんだ。
その日は和食を予約していて、おしゃれな食前酒や八寸から通され、リッチな食事となる。事前に女性には嫌いなものを確認していて、和食を選定していた。その食事は喜んでもらった。
3回目になるとだんだんと距離が近くなってきているように感じていた。それは安曇の錯覚なのだろうかと。
食事を終え、二人してハーブ園に向かう。
ハーブ園にはロープウェイを利用することになる。ロープウエイは二人っきりだ。その日は荒れ模様の天気予報だったのだが、天気も良くなり日が差していた。
安曇は女性に、「誰かが天気をよくしてくれたんだよ、僕らを見守ってくれているんだよ」というと、はにかんでいた。
ロープウェイの中では屋外の風景や、木々や花々を話題にしていた。
ロープウェイを降りて広場に向かって歩き出す。広場から天気の良い下で、遠くの山々や足元の街並みの美しさを語り、写真を撮る。
広場の入り口にある花壇の花々の花の名前を探しながら、花の美しさを楽しむ。
そして奥の施設へ向かう2人。
広場から建物へ向かって歩きはじめると宇喜多さんは、安曇の腕に手を添えた。安曇は手をつないで歩こうと声をかけると、宇喜多さんは頷く。
2人は寄り添って園内を散策する。
安曇はそのときに「女性」というお見合いの対象から、「彼女」という相手に変わった。
その二人の姿は不自然か?いやそうではないだろう。誰が見てもカップルではないだろうか、安曇はそう思う。
そして誰の目も気も気にしなくていい。その日安曇と宇喜多さんは最寄りの駅まで手をつないだままだった。
宇喜多さんは、安曇の手を温かいといった。安曇は「掌が厚いからな」と返す、そうすると彼女は「手が温かいと、心が冷たい?」というので、安曇は笑ってしまった。
手を握っているというのがこんなに幸せなことか。安曇はしみじみ思う。
「香りの館」の中で、いろいろな香りを嗅いで見ながら、顔が近づき話をする。彼女には抵抗感がないようだ。円満なカップルのように見える。
山桜や建物を背景に、宇喜多さんに写真を撮ってあげようかというと、年が判るからいやだと、安曇は無理強いをしなかった。
そこでまた写真館でのことが話題になった。あの写真館で婚活プロフィール用に二人とも写真を撮ってもらったのだ。それも楽しい思い出のようになっていた。
宇喜多さんが時折手を温めていたので、どうしたのと尋ねると、彼女は「私寒がりなんです」というので、安曇は「僕が湯たんぽになってあげるよ」と返したら、笑っていた。
□美しい花々の中で
花々を見ながらハーブ園の庭園を下る。
彼女は一つ一つのハーブを丁寧に見ていく。二人はそれぞれの花々のことを話す。
安曇はこのような光景が、恋愛の一つのシュチエーションだったら、それは求めていたものなのだと思う。
安曇の婚活は、ただ結婚が目的ではない。愛する人に「恋」をしながら時間を過ごしたいと思っている。
相手の女性には特段のことを求めてはいない。お互いが持っているそれぞれの世界を理解し合いながら、ときとして同じ時間を過ごせばいい、そして支え合いながら。
安曇は彼女を見ていると、包んであげたいと思える人と感じている。
彼女は何を思っているのだろう、何を思って腕を組んできたのだろ。そのようなことを聞くわけにもいかない。彼女は前夫と別れ子ども育てている、彼女を支える人は多くいるだろうが、しかし夫は存在しない。心の支えとなる人はいないと安曇は推測する。
宇喜多さんが肩を寄せてきたのは、外気温が寒かっただけだろうか、そうではないだろう。彼氏もしくは夫に包まれたいのではないのだろうか、安曇はそう捉えていた。
安曇の友人は言うかもしれない、「ただ寒かっただけだよ、お前勘違いするなよ」
もしうまくいかなかったら「だから言ったろ、勘違いするなって」
そのような声が聞こえてきたとしても、安曇は勘違いじゃないと信じたい。
美しい花々を見ながら道を下り、花々の写真を撮ってまたそれを見る。
程よいところで温室があって、そこで二人してハーブティーを飲む。
話題はお付き合いの具体的な話題はしない。
雑談とお互いの子どもとの距離などを話す。
2人はまたロープウェイに乗ってハーブ園を後にした。
□気持ちを伝える
安曇はロープウェイの中で、彼宇喜多さんに婚活サービスシステムの中にある紹介休止について言及し、彼女に安曇は今後の他の女性の紹介を断ると告げた。そして婚活サービス会社の担当者からなにがしかの連絡があるかもしれませんねと。
ロープウェイを降りて、外へ出ようとすると小雨が降っていた。
小雨の降り止むまで建物の中で少し話した。
宇喜多さんは私でいいのですかと尋ねる。
安曇はそのつもりだと答える。そしていますぐのことではないだろうから、ゆっくりとお付き合いしようと話すと、彼女は「一人だったらすぐにでも」と口にし、安曇のことを「暖かい人ですね」と言った。
そしてまた手をつないで街中へ向かって歩いていく二人。
途中結婚式場へ道がつながっていて、「今ここへ入るのは早いよな」と安曇が口にすると、彼女はくすくすと笑う。
安曇は彼女の帰りの時間を気遣って、夕方に宇喜多さんを解放することにする。彼女とは電車に乗るまで手をつないでいた。電車は同乗し、途中まで送っていく、そして別れた。別れ際に彼女は手を小さく振っていた。
次は合う場所を約束し、日程は決まっていないもの、ゴールデンウィーク中に会うことになった。その日から1週間から10日の内だ。
彼女は楽しみにしてくれているのだろうか、彼女は次ではどこまでの繋がりを期待しているであろうか、そこがまだ読めない。彼女のこの出会いと、「恋」の温度差を、安曇は考えている。
□微笑み
これまで10名ほどの女性と会ってきたが、素直にか、もしくは自然に気持ちが傾くことはなかった。
今回の彼女には、笑みの中に優しさを感じ取っていた。
そして包んであげたいという気持ちが湧いていた。
それは安曇の一方的な思いで、彼女の気持ちはくみ取れない。
安曇が彼女の気持ちが、近づいてきていると感じたのは、そっと腕を組んできたときだ。

・「新たな展開」
安曇は宇喜多さんの気持ちは読めていなかったが、3回も会ってくれるだけでも嬉しかった。
行先が決まり、食事するお店を探す、出来ればゆっくりと過ごすことが出来てロケーションも良ければと、探したお店に予約を入れる。
大した準備ではないが、その日のことを考えるとそれだけでも夢は膨らむ。
数日前から天気予報では雨が予想されていた。宇喜多さんから天気を心配して、予定変更の提案が寄せられる。が食事する場所を予約していたので、一旦そこまで出向いてもらい、食事をしながらでもどこへ行くか二人で考えられればと想定していた。
宇喜多さんにはそのようにメールを返し、その日を迎える。
予定の時間よりも10分ほど前には約束の場所へ付いておきたいと、ネットで電車のダイヤを確認しておき、10分前には約束の場所には到着した。
すでに宇喜多さんは待ち合わせの場所へ来ていた。「待たしていたのかな」とお詫びしたら、宇喜多さんも今来たところだと答えてくれる。
前回のデートの時に、安曇がリースをプレゼントしたお礼を買いに、早めに来ていたのだ。
2人して早速食事へ向かう。
通されたテーブルが大きめなテーブルで、向かい合わせになると相手が遠くへなるので、隣へ並んで座らせてもらうことにした。
向かい合わせではないが、横に居る相手に向きながら、カウンターに向いて食事するように、食事のひと時を楽しんだ。
その日は和食を予約していて、おしゃれな食前酒や八寸から通され、リッチな食事となる。事前に女性には嫌いなものを確認していて、和食を選定していた。その食事は喜んでもらった。
3回目になるとだんだんと距離が近くなってきているように感じていた。それは安曇の錯覚なのだろうかと。
食事を終え、二人してハーブ園に向かう。
ハーブ園にはロープウェイを利用することになる。ロープウエイは二人っきりだ。その日は荒れ模様の天気予報だったのだが、天気も良くなり日が差していた。
安曇は女性に、「誰かが天気をよくしてくれたんだよ、僕らを見守ってくれているんだよ」というと、はにかんでいた。
ロープウェイの中では屋外の風景や、木々や花々を話題にしていた。
ロープウェイを降りて広場に向かって歩き出す。広場から天気の良い下で、遠くの山々や足元の街並みの美しさを語り、写真を撮る。
広場の入り口にある花壇の花々の花の名前を探しながら、花の美しさを楽しむ。
そして奥の施設へ向かう2人。
広場から建物へ向かって歩きはじめると宇喜多さんは、安曇の腕に手を添えた。安曇は手をつないで歩こうと声をかけると、宇喜多さんは頷く。
2人は寄り添って園内を散策する。
安曇はそのときに「女性」というお見合いの対象から、「彼女」という相手に変わった。
その二人の姿は不自然か?いやそうではないだろう。誰が見てもカップルではないだろうか、安曇はそう思う。
そして誰の目も気も気にしなくていい。その日安曇と宇喜多さんは最寄りの駅まで手をつないだままだった。
宇喜多さんは、安曇の手を温かいといった。安曇は「掌が厚いからな」と返す、そうすると彼女は「手が温かいと、心が冷たい?」というので、安曇は笑ってしまった。
手を握っているというのがこんなに幸せなことか。安曇はしみじみ思う。
「香りの館」の中で、いろいろな香りを嗅いで見ながら、顔が近づき話をする。彼女には抵抗感がないようだ。円満なカップルのように見える。
山桜や建物を背景に、宇喜多さんに写真を撮ってあげようかというと、年が判るからいやだと、安曇は無理強いをしなかった。
そこでまた写真館でのことが話題になった。あの写真館で婚活プロフィール用に二人とも写真を撮ってもらったのだ。それも楽しい思い出のようになっていた。
宇喜多さんが時折手を温めていたので、どうしたのと尋ねると、彼女は「私寒がりなんです」というので、安曇は「僕が湯たんぽになってあげるよ」と返したら、笑っていた。
□美しい花々の中で
花々を見ながらハーブ園の庭園を下る。
彼女は一つ一つのハーブを丁寧に見ていく。二人はそれぞれの花々のことを話す。
安曇はこのような光景が、恋愛の一つのシュチエーションだったら、それは求めていたものなのだと思う。
安曇の婚活は、ただ結婚が目的ではない。愛する人に「恋」をしながら時間を過ごしたいと思っている。
相手の女性には特段のことを求めてはいない。お互いが持っているそれぞれの世界を理解し合いながら、ときとして同じ時間を過ごせばいい、そして支え合いながら。
安曇は彼女を見ていると、包んであげたいと思える人と感じている。
彼女は何を思っているのだろう、何を思って腕を組んできたのだろ。そのようなことを聞くわけにもいかない。彼女は前夫と別れ子ども育てている、彼女を支える人は多くいるだろうが、しかし夫は存在しない。心の支えとなる人はいないと安曇は推測する。
宇喜多さんが肩を寄せてきたのは、外気温が寒かっただけだろうか、そうではないだろう。彼氏もしくは夫に包まれたいのではないのだろうか、安曇はそう捉えていた。
安曇の友人は言うかもしれない、「ただ寒かっただけだよ、お前勘違いするなよ」
もしうまくいかなかったら「だから言ったろ、勘違いするなって」
そのような声が聞こえてきたとしても、安曇は勘違いじゃないと信じたい。
美しい花々を見ながら道を下り、花々の写真を撮ってまたそれを見る。
程よいところで温室があって、そこで二人してハーブティーを飲む。
話題はお付き合いの具体的な話題はしない。
雑談とお互いの子どもとの距離などを話す。
2人はまたロープウェイに乗ってハーブ園を後にした。
□気持ちを伝える
安曇はロープウェイの中で、彼宇喜多さんに婚活サービスシステムの中にある紹介休止について言及し、彼女に安曇は今後の他の女性の紹介を断ると告げた。そして婚活サービス会社の担当者からなにがしかの連絡があるかもしれませんねと。
ロープウェイを降りて、外へ出ようとすると小雨が降っていた。
小雨の降り止むまで建物の中で少し話した。
宇喜多さんは私でいいのですかと尋ねる。
安曇はそのつもりだと答える。そしていますぐのことではないだろうから、ゆっくりとお付き合いしようと話すと、彼女は「一人だったらすぐにでも」と口にし、安曇のことを「暖かい人ですね」と言った。
そしてまた手をつないで街中へ向かって歩いていく二人。
途中結婚式場へ道がつながっていて、「今ここへ入るのは早いよな」と安曇が口にすると、彼女はくすくすと笑う。
安曇は彼女の帰りの時間を気遣って、夕方に宇喜多さんを解放することにする。彼女とは電車に乗るまで手をつないでいた。電車は同乗し、途中まで送っていく、そして別れた。別れ際に彼女は手を小さく振っていた。
次は合う場所を約束し、日程は決まっていないもの、ゴールデンウィーク中に会うことになった。その日から1週間から10日の内だ。
彼女は楽しみにしてくれているのだろうか、彼女は次ではどこまでの繋がりを期待しているであろうか、そこがまだ読めない。彼女のこの出会いと、「恋」の温度差を、安曇は考えている。
□微笑み
これまで10名ほどの女性と会ってきたが、素直にか、もしくは自然に気持ちが傾くことはなかった。
今回の彼女には、笑みの中に優しさを感じ取っていた。
そして包んであげたいという気持ちが湧いていた。
それは安曇の一方的な思いで、彼女の気持ちはくみ取れない。
安曇が彼女の気持ちが、近づいてきていると感じたのは、そっと腕を組んできたときだ。
by k2675
| 2015-11-22 15:12
| 恋の物語